要旨:SPring-8では、1997年のユーザー運転開始来、ビーム性能の
向上を継続してきた。現在、25mの長尺アンジュレータで約10の21乗
の高輝度を、10の9~10乗の純度の孤立バンチ(最大1.7mA)
を含む
平均電流100mAにて安定に供給している。この間、
(1)30mのmagnet-free の長直線部の導入
(2)軌道安定化
(3)低エミッタンス化
(4)Top-up運転
の高度化を実現してきた。さらなる高度化のプログラムとして
(5)クラブ空洞による単パルスX線の生成
(6)4次元位相空間変換に基づく2次元空間可干渉X線生成、
(7)低エネルギー運転
等が検討され、スタディが進められている。一方で、電子ビームの
放射プロセスに縛られない超低エミッタンス・短バンチ電子ビーム
を用いたSASEによるX線レーザーの実現に向けたR&DもSPring-8
サイトで進められ、最近、その試験加速器により50nmの波長近傍
でSASEの明確な増幅が確認されるに至った。
本講演では、講演者が深く関わった、上記(1)~(4)の、現在に
至るSPring-8放射光施設の性能向上を、一番最近の話題、
”低エミッタンスtop-up”の実現に焦点を当てReviewすると共に、
講演者が最近参加したSCSS試験加速器(リニアック)のビーム調整
の経験から感じたリング型加速器と直線型加速器のビーム調整の
同一性等を紹介する。SAD2006の講演枠を意識し、各高度化における
計算機シュミレーションの役割もできるだけ触れるように努力する。